森重専務の「経営の湧き水」

NEW!2026.3月:特別寄稿「制度と現実のあいだに立つ」― 消費税をめぐる五つの視点と、実務家としての応答 ― 第2回

価格は制度ではなく、市場が決める

消費税の議論において、最も重要でありながら見落とされがちな論点があります。それは「価格は制度ではなく、市場が決める」という単純な事実です。

制度は、消費税を価格に転嫁することを前提にしています。例えば、本体価格1,000円の商品であれば、消費税10%を加えて1,100円で販売し、その100円を納税する。この構造が制度の基本です。

しかし現実の市場では、価格は常に競争の中で決まります。競合他社が1,000円で販売している中で、自社だけが1,100円で販売すれば、顧客は競合に流れます。結果として、税込1,000円で販売せざるを得ない状況が生まれます。

この場合、会計上は税込1,000円の中から消費税相当額を計算して納税することになります。つまり消費税相当額は、消費者から明確に受け取ったものではなく、企業の付加価値の中から支払われることになります。

これは制度の誤りではありません。市場の現実です。

特に価格競争の激しい業界、下請構造の強い業界、差別化の難しい業界では、この傾向は顕著になります。価格決定力の弱い企業ほど、消費税は「転嫁される税」ではなく、「利益を圧迫する税」として作用します。

ここで重要なのは、制度を批判することではなく、この現実を正しく認識することです。

消費税は、すべての企業に同じ税率で課されます。しかし、その経営への影響は、企業の価格決定力によって大きく異なります。

つまり消費税は、単なる税制の問題ではなく、企業の競争力を映し出す鏡でもあるのです。