森重専務の「経営の湧き水」

NEW!2026.3月:特別寄稿「制度と現実のあいだに立つ」― 消費税をめぐる五つの視点と、実務家としての応答 ― 第3回

問題提起の強さと、制度設計の現実

消費税を巡る議論の中で、「消費税は事業者が負担している」という指摘があります。この指摘は、実務の現場を知る者にとって、決して違和感のあるものではありません。

価格転嫁が完全にできない場合、消費税相当額は利益の中から支払われます。これは理論ではなく、多くの企業が日々経験している現実です。この現実を言語化した問題提起には、明確な意義があります。

一方で、消費税は国家財政の基幹税でもあります。現在、消費税は国と地方を合わせて20兆円を超える税収を支えています。この規模の税を廃止する場合、その代替財源をどのように確保するかという問題が必ず生じます。

これは制度の是非とは別の次元の問題です。

税制は、個々の企業の事情だけでなく、国家全体の財政構造の中で設計されます。そのため、制度の問題点を指摘することと、それを現実に置き換えることの間には、大きな距離があります。

税の専門家として、制度の構造を理解することは重要です。同時に、経営者として、その制度の中で企業を存続させる責任があります。

私たちは制度の評価者である前に、経営の実践者です。

制度を理解することは必要です。しかしそれ以上に重要なのは、その制度の中でどのように企業を守り、成長させるかを考えることです。
そこに、実務家としての本当の役割があります。