法人税・所得税の税務調査統計
法人の方が入られるイメージ?
税務調査とは、法人・個人が行った申告に対して、申告内容が正しいかどうかを税務署が調査することです。何となく法人の方が「税務調査を受けやすい」というイメージが強いのではないでしょうか。
国税庁は令和3事業年度(令和3年7月~令和4年6月)に実施した調査の統計を公表しています。それによると法人税の実地調査件数は約4.1万件、所得税の実地調査件数は約3.1万件、となっています。
件数だけ見ると確かに法人税の調査の方が多いのですが、それほど差があるようには感じません。ただ、申告件数は令和3年のデータで法人税が306万件、所得税が2,285万件(うち申告納税額があるのは657万件)ですから母数が違います。申告数を含めて見ると「法人の方が税務調査を受ける確率が高い」と言えるでしょう。
簡易な接触は所得税が圧倒的に多い
簡易な接触とは、税務署が原則、納税者の会社や自宅等に臨場するのではなく、文書・電話による連絡や来署依頼によって面接を行い、申告内容等の見直しをしてもらう対処です。こちらは法人への簡易な接触が6.7万件、所得税が56.8万件です。申告件数から見ると妥当な差なのかもしれません。
この「簡易な接触」によって追徴された税額は、法人が104億円、所得税が254億円となっており、実地調査の法人税1,438億円、所得税804億円と比べるとスケールは小さくなるものの、それなりにボリュームのある金額にはなっています。
所得税もしっかり見ているが
調査1件当たりの平均追徴税額を見てみると、所得税の実地調査は256万円、簡易な接触は4万円となっています。税務署は額の大小を問わず、申告書の間違いや未提出等を確認して、連絡するようにしている、という姿勢が見て取れます。そして、実際の税額との乖離が大きいと踏めば調査にやってくるのです。
法人税の調査1件当たりの追徴税額は352万円と、所得税に比べるとやや額が大きく、報道されるケースもあり目に付く機会も多いため「税務調査と言えば法人」というイメージがあるのかもしれませんね。
事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
順位 | 業種目 | 1件当たりの 申告漏れ 所得金額 | 1件当たりの 追徴課税 (含加算税) | 前年の順位 |
---|---|---|---|---|
1位 | 経営コンサルタント | 2,266万円 | 611万円 | 7位 |
2位 | システムエンジニア | 2,150万円 | 519万円 | 11位 |
3位 | ブリーダー | 2,136万円 | 518万円 | 8位 |
4位 | 商工業デザイナー | 1,752万円 | 410万円 | 10位 |
5位 | 不動産代理仲介 | 1,656万円 | 453万円 | 9位 |
6位 | 外構工事 | 1,517万円 | 254万円 | - |
7位 | 型枠工事 | 1,507万円 | 239万円 | - |
8位 | 機械部品受託加工 | 1,507万円 | 319万円 | - |
9位 | 一般貨物自動車運送 | 1,493万円 | 195万円 | 14位 |
10位 | 司法書士、行政書士 | 1,440万円 | 358万円 | - |
2 「前年の順位」は、事業所得を有する個人の前年の1件当たりの 申告漏れ所得金額が高額な上位20位に該当するものについて、その順位を記載している。