2017年度 地域別 2000 件の「加盟店利益平均」調査
さくら相談 UNITED コンビニ経営研究所所長 三橋一公

人件費高騰の中、コンビニ事業を成功させるために必要な考え方

さくら相談UNITED内の税理士法人は、コンビニ個人事業者(約2000件)の 2017年3月度の確定申告の数字をもとに、一定の設定をした上で、加盟店利益を算出した。加盟店の最終利益は一般には公表されておらず、チェーン本部においても、2000件ものまとまった店舗数の数字は把握できていない。加盟店の経営実態を示すとともに、コンビニ事業を軌道に乗せ、成功させるための方向性を提言する
vol51-1
統計数値の設定条統計数字の設定条件は次の通りである。

  1. エリアを、①北海道・東北、②関東、③中部、④近畿、⑤中国・四国、⑥九州・沖縄の6つに分けて集計し、グラフ化した。
  2. 集計を三大チェーンの加盟店のみとし、サークルKサンクスはファミリーマートとして集計した。
  3. 加盟店利益は、同一生計の専従者給与の合計とし、親子、兄弟家族でも別生計世帯の所得は人件費とした。また各チェーンによって加盟店に対する補助金、販促応援金、助成金等々は出し方、名目はバラバラであるが、すべて加盟店の収支に組み込んで加盟店収入を計算した。ロイヤリティ等は全て「その他」の経費で計上している。

本来は、契約タイプ別を出したほうが、さらに綿密に分析できるのだが、これは次年度の課題としたい。
また前提として会計事務所に税務申告を依頼できる財力がある加盟店の集計なので、収益が厳しく、自己申告か、一定数の無申告状態の店舗もあることを考慮すると、実態的な加盟店利益は、もう少し低めに見なければいけない。
こうした前提の数字ではあるが、2000 件に近い確定申告時の偽りのない統計値なので、価値のある数字ではないかと考えている。

「売上平均」地方ほど日販の格差顕著

vol51-2
では各項目の数字を基に分析を試みたい。
最初に「売上平均」について。関東よりも、北海道・東北や九州・沖縄が高く出る結果となった。経済産業省の「商業動態統計調査」では、1店舗当たりの販売額は、関東、九州・沖縄、中国の順になる。
この差の理由は、関東と比較して、地方ほど高日販店と低日販店の差が大きく、加盟店収入の差が大きくなっている。北海道・東北には、高日販店も多い半面、低日販店も、かなりの数が存在する。このような店舗は、税理士を雇わない傾向が強く、どうしても余力のある高日販店の集計となる。その結果、九州・沖縄、北海道・東北、中国・四国が、関東を上回る結果となった。
関東は平均日販が 50万円前後あれば、年間で 500万円くらいの加盟店利益を得られるので、税理士を雇う余裕がある。一方の地方の店舗には日販 30万円台が多くあり、加盟店利益は 300万円そこそこになる。そうした店舗は節税効果も小さく、税理士に任せず、自身で申告しても大きな差は出ないので、今回の集計には入ってこない。
このような背景もあり「売上平均」は、関東と地方の逆転現象が起きている。「売上原価平均」は、「売上平均」にほぼ連動した数字になった。

「人件費平均、その他経費」低客単価が人件費に影響

vol51-3
「人件費平均」を見ると、パート・アルバイトの平均時給の高い、関東と近畿が高い数字となっている。
やはり首都圏や大阪は、条例で定められた最低時給の高騰が人件費に直結しており、大都市圏におけるコンビニ経営の難しさを物語っている。加盟店オーナーにとっては、さらに近年の電気代の値上がりなどによる経費アップにより、年々経営環境は厳しくなってきているのが個々の数値から見て取れる。
飲食店チェーンやドラッグストアの店舗増は、人材の奪い合いによる人手不足を引き起こしている。コンビニは飲食店に比較すると時給単価が低い。近隣のコーヒーショップが人材募集をかけるとコンビニに人が集まりにくくなる。人材募集費の増大および時給単価の高騰は当面は変わる見込みもなく、コンビニ経営を圧迫し続ける要因となっている。
さらに都市部は、駅前立地、繁華街立地、特殊立地が多く、それらの店では、客数は多いのだが、買上点数が少なく、客単価が 400円切る店も珍しくはない。客単価の低さを客数の多さで稼ぐことによって、たとえ同じ日販であっても、都市部の店は地方の店よりも、人員が多めに必要となり、人件費平均を押し上げる結果となった。そのため、都市部は売上に対する人件費率が高く、加盟店利益を圧迫する要因となっている。
「その他経費」については、水光熱費のほかにチェーン本部へのロイヤリティが多くを占めている。売上高に応じたロイヤリティが設定されていることと、チェーン本部による比率の違いが各地域の数字に影響を与えている。

「加盟店利益平均」地方で A タイプに加盟

vol51-4
売上から、売上原価、人件費、その他経費を差し引くと加盟店利益となる。年間 5335千円(関東)から 7359 千円(九州)の間となった。冒頭にも記したが、同一生計の専従者給与の合計として計算した。また税理士に委託している加盟店という性格上、コンビニ加盟店の実態より高めの数字であることも繰り返し述べておきたい。
加盟店利益を高めるために A タイプ(土地・建物のコストを加盟者が負担)を志向するオーナーも今回の集計の中に多くいる。首都圏のオーナーの中には都心部の店舗を避けて郊外(北関東)の Aタイプで開業する例も多くなってきた。もちろん開業後のロイヤリティの低さが魅力である。
Aタイプを、北関東で開業すると 300坪の敷地を 40万円前後の地代で借りられる。Aタイプが十分に成り立つの地代だが、これが都心に近いと同じ 300坪で 100万円以下の土地はでてこない。個人自供主が地代 100万円以上を負担してコンビニを経営するにはリスクが高すぎる。
北関東の Aタイプのお店の中には、Aタイプの運営を希望して、わざわざ東京から移転してオーナーになっている方もいる。確かにAタイプは初期投資がかかる。ロードサイド店の場合は、駐車場などの外構工事が2000万円、内装費が1000万円、建物が一時より安くなり 2000万円は掛からないので、計 4500万円前後になる。
もともとロードサイド店やガソリンスタンドなど駐車場がある物件は、外構工事は低くなる可能性はある一方で、コンビニの建物と駐車場が以前よりも大きく面積を確保しているので、隣接する敷地と合わせて開業するケースもある。
その逆に、農地転用は土地の改良工事が必要なので投資は大きくなる。水田の水を抜いて固化材を使用するなど改良工事だけで 3000万円は必要となる。その上に、外構工事、内装費、建物を加えると初期投資は7000~8000万円になる。農地転用による開業は個人事業主には難しいだろうが、通常の土地で4000~5000万円あればAタイプで開業できる。コンビニ経営においては、ハイリスクハイリターンである。
しかしながら、多くの物件は Cタイプであり、チェーン本部が土地と建物に投資している。ある一定条件で契約したのならローリスクローリターンが原則である。
問題は次の店を出すとき。チェーンによっては、内装費のみオーナーが出すタイプにタイプ変更ができる。ある程度のリスクを背負っていけば、Aタイプまではいかなくても、軌道に乗せられれば Cタイプよりも収入は多くなるわけである。
今は経営能力と経営判断を求められる時代である。事業意欲があって、コンビニで一旗揚げるくらいのビジョンがあれば成功する確率も高くなるが、昔でいうところのパパママストアのイメージで商売を始めると、厳しい結果になる可能性が高い。

法人成りのメリット

今回は個人事業主のデータなので、1、2 店舗の加盟店が多い。3 店舗以上になると法人成りを考えるようになる。利益が出てくると法人でなければ節税が難しい。近年は法人にすると社会保険が義務付けられるので、健康保険と厚生年金保険を支払わなくてはいけない。
将来的に 5、6 店舗に拡大したいのなら、今のうち法人成りしたほうがいい。1 つは社会保険を付けないと、将来を担える従業員の確保が難しいことだ。事業を大きくする前提で、今のうちに法人成りして、社会保険に入っておくこと。
一方で、これ以上、事業を大きくする意向がなければ個人事業主のままでいいという判断もある。オーナーによっては、この先事業を拡大しなくても、現状の従業員に長く働いてもらいたいたから社会保険に入ったというオーナーもいる。

人材不足対策が急務

先日セブン-イレブン・ジャパンはロイヤリティの一律1%引き下げを発表した。これは加盟店のコストアップに対する補助策の一つであり、ロイヤリティを下げるという方法により援助することは、人件費の高騰を考えると評価できる決断である。
他のチェーンにおいても、加盟店の人材不足対策に本部が積極的に関わりだしている。年々加盟店収支が厳しくなっている現状は間違いない。
現状の経営環境の中で、加盟店の繁栄があって本部の繁栄があるという、共存共栄のフランチャイズシステムの大前提に立って、加盟店の収益をどう確保していけるかで、チェーンの優劣の差がはっきりついてくると私は考えている。
一方加盟店側でも漫然と収入減を嘆いているだけでは歯止めがかからないのは明白であるので、積極的なコンビニ事業の経営を行っていく必要がある。この現状でも十分な収益を出している多くの加盟店があることも事実なのである。
収益を上げるには、売上を上げる、無駄な経費を削減する、事業規模の拡大を同時に実行していくような経営努力が望まれる。

前進か後退か決断の時

事業規模を拡大する、すなわち、厳しいときに前進するのか、後退するのか、という話になってくる。後退するというのは、経費をとことん切り詰めて、最低限の収入で契約期間を終えるということ。
どれだけ自分頑張っても、お店の売上が伸びないとなったら、チェーン本部と合議で閉店に納得してもらえればいいのだが、それが無理であれば、廃棄ロスを極力少なくしてして、人件費を極力引き下げて、最低限の収益だけは確保する。
縮小するのか、拡大するのか、あるいは、意欲はあるのだが、たまたま厳しい店に付いてしまったが、しっかりとした店舗オペレーションの実践を示すことができるのなら、チェーン本部と交渉して、利益が出ると分かる次の店を紹介してもらうことだ。
次の店とは、日販はそこそこあるのだが、オーナーが健康上の理由で、離れることになった物件もあるわけである。そういうお店を譲ってもらうことだ。
そうなると、2 店舗を合わせて収支を考えていけばよい。事業規模を拡大していきたいと本部に意思表示をしておき、その代わり、現状のお店をきちんと回しておく。
今はオーナー志望者も一時に比較すると少なくなっている。地方であれば、オーナーの店舗待ちもあるようだが、都心部ではオーナーが付かない店舗も多くある状況である。やる気があって、能力が認められると、そういったチャンスが巡ってくる。
中途半端な店舗運営をしないで、まだコンビニを頑張っていきたいのであれば、本部と交渉する。きちんと品揃えをしている、販促努力もしている、クレンリネスもしっかりしている、それだけやっても収支は赤字です、となれば、チェーン本部も優秀なオーナーには優遇処置もとるので、収益の見込めるもう 1 店舗を紹介してもらい、当面は 2 店舗で収支を図っていく。
もちろん簡単なことではないが、このような経緯で成功しているたくさんのオーナーを見てきている。すなわち、チェーン本部と加盟店が相互に努力した結果として、収益の上がるコンビニ事業となると考えている。 (談・文責 編集部)