3人のオーナー事例から読み解く利益を上げる正しい付き合い

チェーン本部同士の競争環境が厳しくなる中で、加盟店は本部の施策に翻弄されることなく、自らの利益をしっかりと確保する必要がある。長年にわたり店舗オーナーの収支を見てきた筆者が、加盟店と本部、双方が納得できる関係の在り方と、加盟店収益確保に今、必要なことは何かを提言する

さくら相談UNITED コンビニ経営研究所所長 三橋一公

コンビニ経営に対して否定的な言説はネット上でいくらでも見ることができる。チェーン本部に対する批判の書も数多く出版されている。その多くは事業に行き詰った加盟店を例に挙げ、チェーン本部の責任を問う内容である。つい先日もNHKのクローズアップ現代でもコンビニの経営について厳しく取り上げられていた。
そうした加盟店とチェーン本部との溝に焦点を当てた、コンビニ経営に対するネガティブな情報は、ネットメディアや近年のSNSなどに乗って、多くの人たちが目にするようになった。一方で、堅実に経営している多くの加盟店は、自ら情報発信する動機が薄いため、声となって上がってこないという現実もある。
本稿の目的は、どちらか一方に立脚するのではなく、加盟店とチェーン本部との不毛な諍い(いさかい ルビ)を避けるためにも、そして真に魅力ある産業にするためにも、両者のあるべき関係を、3つの事例とともに考えてみたい。

あるコンビニオーナーAさんの場合

店から300メートルの物件を契約し収支が悪化
Aオーナーは、ある大手コンビニチェーンに加盟して約5年余りがたち、立ち上がりは厳しい収支だったが、コツコツと真面目に店舗運営に取り組み、現在ではチェーンの平均日販を多少上回るほどになっていて、収益もまずまずの状況で日々コンビニ運営に前向きに取り組んでいた。

そんなある日、本部のリクルーターが訪ねてきて「店から300メートル程のところに物件が出て、本部として賃貸借契約をする予定だが、オーナーが2号店としてやるなら優先的に紹介するがどうするか?」と話を持ちかけてきた。明らかに商圏が重なるエリアであり、自店の売上に相当影響することは容易に想像できた。オーナーは、確実に売上が落ちるので、そこに出さないでほしいと話したが、フランチャイズ契約では、オーナーには営業エリアの独占権はないので出店を止めることはできなかった。リクルーターからは、自分がやらなければ他のオーナーに任せることになると 言われ、やむなく2号店として契約をすることになった。

結果は既存店と新店で商圏を奪い合う結果となり、売上は新店・既存店合わせて既存店単店時代の120%であった。しかしながら経費は約2倍になり、収支は相当厳しい状況となってしまった。

あるコンビニオーナーBさんの場合

商品を積んだら廃棄増、追加元入れ金の請求が
Bオーナーは大学卒業後、45歳までずっとサラリーマンを経験し、あるきっかけでコンビニ経営を思い立ち、家族を説得して大手コンビニチェーンに加盟。経営委託タイプ(Cタイプ)にて、退職金を初期投資に回して開業した。しかしその開業した店は、予想していたほど売れず、平均日販をかなり下回る低日販店だった。

本部のSVは、もっと商品を積んで、競合よりも良い品揃えをお客様にアピールして、固定客を増やし、売上アップを図りましょうと指導した。
Bオーナーは、その言葉通りに、多くの廃棄ロスを出しながらも指示通り商品を積み続けた。その結果、多少売上は上がったものの、収支で大きく赤字を出して、本部へのアカウント借り入れが上限を超えて、本部より追加元入れ金100万円を入れるように告知された。Bオーナーは、そこで初めて自分の事業収支を大きく認識できた状況だった。

Bオーナーにすれば、本部の指示通りに運営してきて、ただ借金が増えて、借金がかさむ指導をしてきたその本部から、借金の取り立てをされるにおよび、不信感で一杯となってしまった。それまでの本部に対する気持ちが切れて、本部の人とも敵対的な会話ばかりとなり、会う人会う人に、本部への不信感と、この状況をつくった本部への恨み辛みの会話ばかりするようになってしまった。当然、店は活気がなくなり、清掃・サービスもレベルダウンして、売上もより下降線をたどってしまった。

あるコンビニオーナーCさんの場合

雇われ店長からオーナーへ複数店経営を成功させる
Cオーナーは元々オーナーさんに雇われていた俗にいう「雇われ店長」だった。5年程務めていた間にオペレーションや店舗経営に関するノウハウの蓄積をし、さらに人材確保の目途をつけ、スタート当初から複数店経営を目指した。

そして万全を期してCタイプ1号店を開店し、その初年度にさらに2店舗計3店舗の経営に乗り出した。開業から約5年余りで10店舗を超え、コンビニオーナーから起業家、事業家へと脱皮した。10店舗がすべて黒字店舗かといえば、決してそうではなかったが、本部のニーズと自分のニーズをうまく交渉しながら、新規出店についても相互補完関係が成り立っているように見える。

加盟店とチェーン本部の在り方

※本部の意見を鵜呑みにせず自らの足を使って考える
この3オーナーの事例を元に、今後の加盟店と本部の関係の在り方について、そして加盟店の収益改善について私見を述べたい 。Aオーナーの問題点から考えてみたい。実はこのAオーナーのようなご相談は、筆者の元には数多く寄せられている。新規オーナーの確保が容易とは言えない現状では、新規物件を近くのオーナーに複数店の候補として紹介することが極めて増えている。
まず本部側の問題点として、開店予算優先の店舗開発になっていないだろうか?
例えばロードサイド立地において、同じ車線側で300メートルの距離だとしたら、明らかに導線が被っており、売上を分け合うことは自明の理である。仮に中央分離帯があるような道路の反対車線であれば、商圏、導線ともバリアで遮られているので、バッティングせず、たとえ距離が100メートルでも既存店売上に影響しないと思われる。しかし、Aオーナーへの紹介案件を見ると、商圏・導線がかなり被っていると言っていい。
実際に私が聞いた、駅前ロータリーの案件でも、ロータリーの右側にあった店舗に対して、ロータリーの左側に面した物件を紹介し、ロータリーの左右に同看板のコンビニが向かい合う状態になった。商圏が左右に分かれるからバッティングしないという本部の説明だったが、結果として2店は並び立たず、1年持たずに1店が閉店となった。

本部が本当に加盟店の収益を考えるのなら、商圏、導線が被っている案件が出たのなら、既存店とその物件の立地要件を比較して、その物件の方が優れているのであれば、2号店ではなく、店舗移動を進めるべきではないだろうか?
一方の加盟店側の問題点を検証してみる。この状況だと断りにくいとか、自分が開拓してきたエリアの顧客を、他のオーナーに取られたくないといった私情が、判断の優先基準となっていなかっただろうか?出店判断基準は、あくまで事業家として、本部の言うことを鵜呑みにするのではなく、物件に対して冷静な売上の予測をたて、投資回収見込みを見極めることが必要とされていた。自店の売上に大きな影響が出ると分かっていたのいだからなおさらである。
次にBオーナーについて。まず本部の問題点は何と言っても立地判断ミスであろう。コンビニの売上の70%~80%は立地と物件要件で決まってしまうからである。それなのに、オーナーに廃棄ロス、人件費の2大コストについてよく理解させず、売上アップ策をむやみに指導して赤字を増大させ、借金を膨らませてしまっている。
脱サラしたオーナーに多くありがちなのが、独立した事業主であるとの意識の欠如である。もともとサラリーマン時代には会社や上司から指示されて仕事をしていた意識が変わらず、本部の言うことを鵜吞みにして、自分で調べたり、勉強したり、行動したりもせず、うまくいかないと急激な不平不満を言い出してしまう。紹介された店舗にしても「私は素人だから立地の良し悪しが分かるわけがない。大きなチェーン本部の紹介だから大丈夫と思った」と本部に対する責任追及ばかりを考えている。
確かに気持ちは分からないではないが、加盟店と本部はそれぞれ独立した事業主であり、フランチャイズ契約は雇用契約ではないことを理解しているはずで、当然事業主としての自己責任をもっと認識すべきなのである。店舗にしても紹介された時点で、たとえ立地判定手法が分からなくても、朝昼晩の通行量、競合店の客数、聞き取り調査など、素人でも1週間かけて調べれば、そこにコンビニが必要かどうかイメージできるものだ。また事業主として本部帳票の損益計算書・貸借対照表の数字の意味も勉強していない。それでは事業はうまくいくわけがない。

加盟店利益の確保を第一主義とすべき

Cオーナーは加盟店と本部の関係が成功している事例である。その成功理由は次の3つである。

  1. 5年あまりのコンビニ勤務および経営代行経験から、オペレーションに不安がなく、コンビニの良いところだけでなく、厳しいところも見たうえで起業していること。
  2. コンビニで起業するためには複数店経営をやらなければ、メリットが少ないと考えて、開業前から5店~10店経営する意志を持って、資金と人材の確保を準備していた上に、本部とも前からネゴシエーションしていたこと。
  3. 事業主として本部と常にコンタクトを取り、本部の要望と自分の要望のギブアンドテイクの関係が築かれている。
    結論として、本部が出店に当たり優秀なオーナーを確保したいのであれば、出店予算・閉店予算ありきではなく、加盟店利益の確保を第一主義としていくべきである。

またAさんの場合のような物件紹介は極力避けるべきであり、新規物件が既存店より立地要件が良い場合、商圏や導線が被るのであれば、店替えで対応するような、無駄な店舗数増やすよりも収益性高い店舗数確保を心掛けるべきであろう。
Bさんのような不幸なオーナーをつくらないようにするためには、現状の脱サラオーナーに対して、2週間程度で開店させる現状のモデルでは研修期間が短かすぎる。店舗オペレーションだけではなく、コンビニ経営の数値の見方をもっと教育すべきであろう。
一方の加盟者も、独立した事業主としての意識と自己責任をしっかりと持った上で契約すべきであろう。
コンビニ業界に長く携わっている者として、加盟店の収益が改善されていき、明るい業界未来が見えてくるように願わずにはいられない。