「個人なり」とはあまり聞きなれない言葉だと思います。多くの方は「法人なり」という言葉は聞いたことがあると思います。通常、コンビニ加盟店は個人事業でスタートして、売り上げ・利益が上がったり、複数店経営になったりしたときに「法人なり」をすることにより事業主体の変更をします。それは法人にした方が、合法的な利益コントロールがしやすくなったり、組織作りもしやすくなったりするからです。
では「個人なり」とはどういう事かといえば、「法人なり」の逆で法人事業を個人事業に戻すことです。今まで法人で事業をやっていた方でも、競合店等出来て収益が下がったしまった方や複数店経営していたが閉店等により単店もしくは収益低い複数店経営に成ってしまった方に適した方法です。この方法は以外に知られていなくて、一度法人にしたら戻せないと思っている方も少なくありません。

また最近では、年金事務所からの社会保険加入の調査も厳しくなり、収益的に払えない方は、強制適用事業所ではなくなるために、個人に事業を戻す選択をされる方も増えて来ていて、私どもグループでも月次10件程度の個人なりの依頼をお受けしています。

個人成りするメリット・デメリットの概略は以下の通りです。
メリット
① 法人事業を始めて一定期間経過していれば、個人事業に変わった時から、原則2申告年度の消費税の納税免除(売上高、人件費等により一部適用外有り)が受けられます。
② 税理士費用が安くなる。
③ 社会保険は法人は全て強制適用事業所となりますが、個人事業では事業主、専従者を除く、平均的な週の労働時間が、30時間を超える従業員が4人以下であれば強制適用とはならず、任意加入となります。

デメリット
こちらについては添付一覧表の4番及び7番~9番が該当しますので、参照してください。では、添付の表につきそれぞれ補足説明をして参ります。
1はフランチャイズ本部と、金融機関等で法人名義での借り入れがある場合には、個人なり作業前に、本部及びその金融機関に承諾を得ておく必要があります。事後だと、トラブルになる可能性があります。
2解散・清算する場合には申告や登記等の手続きが必要で費用が掛かります。法人を休眠(法人は残して休業状態とする)場合は税務署に届け出を出すのみで手数料等は発生しません。
それぞれにメリット・デメリットありますので専門家にご相談ください。
3この場合には、年金事務所に脱退等の手続きが必要ですが、最近は多くの場合、脱退するのに、解散して登記した証明書「履歴事項証明書」等の提出を求
められるので、前項の会社休眠対応では脱退できないようです。また個人でもメリットの③の項目で書いた要件以上であれば、強制適用事業所となりますので、注意が必要です。
4法人で節税対策用のガン保険や長期平準定期保険、逓増定期保険等、解約返戻金が多い保険等については、個人名義に切り替えるとき税金が発生する場合がありますので、保険会社に相談してください。尚、今まで経費で計上していた上記のような保険の支払いは、殆ど個人では経費にできません。
5酒類免許、タバコ免許、及び保健所の営業許可証については個人名義に切り替えが必要です。酒類免許は税務署へ、タバコ免許は財務局、営業許可書は保健所にそれぞれ申請します。それぞれ登録にあたり費用が発生します。
6法人から個人に切り替わる時期は、酒類免許が切る変わる時となります。それまでは法人事業が継続しますので、法人決算期等検討の上、平均申請書受理されてから2か月を目途に準備すると良いでしょう。
7商品については免税期間が終わり、課税事業者に成ってからの消費税支払額から控除できますので損はありませんが、加盟金、内装費、車両等の譲渡時の消費税は取り戻せません。
8特に学生等のお子さんでも、法人の場合人件費として計上出来ましたが、個人事業では学生等のお子さんに対する給与は経費にできません。
9は最近コンビニでも外国人客用に、消費税免税店の認可を取る店も多く出てきたので、注意事項としてあげました。
個人事業が良いか法人事業が良いかは、今後の事業計画や見込みにより変わってくるので、目先の社会保険料や消費税免税だけで決めると逆にマイナスに成る場合もあるので、よく検討して後悔無いようにして決めてください。

個人成り時のチェックポイント
  1. 法人名義での借入がある場合は、名義変更等の手続きが必要となります。
  2. 個人事業切り替え後、法人は休眠(法人は残して休業状態とする)もしくは解散・清算(法人を残さない)のどちらかの状態にする必要があります。
  3. 社会保険に加入している場合は、脱退等の手続きが必要となります。
  4. 法人名義で生命保険に加入している場合は、名義の切り替えが必要になります。
  5. 酒販免許をおもちの場合には、法人から個人への酒販免許の名義変更の手続きが必要です。
  6. 酒販免許をお持ちの場合は、税務署の対応速度により名義の切り替わりにかかる期間か変わります。
  7. 個人事業への切り替え時、法人が消費税の課税事業者(免税期間を過ぎている等)であった場合、事業切り替え時に法人の事業資産(商品・加盟金・内装・車等)を個人事業に移す時に消費税が発生します。
  8. 個人事業者となった場合、生計を一にする親族に対する給与については経費として計上できなくなります。
  9. 消費税免税店(輸出物品販売場)の認可をとる場合、消費税課税事業者である事が条件なので、個人なりして消費税免税期間を得た場合、その期間中にはその認可は受けられません。