求人倍率が高止まり、時給上昇に歯止めかからず 
 
「とくに、学生に採用が難しくなっている。勤務条件の厳しさから、深夜と早朝の求人難が続いている」
 こう語るのは、求人情報会社のアイデムの川村哲夫氏(コアマーケット営業部マネージャー)だ。
同氏は、2020年の東京オリンピック開催に向け、建設業の人材需要などを背景に、採用環境の厳しさが続くとし、ターゲットとする人材枠を広げるべきと指摘する。

タイト感増す採用環境
本部支援も本格化

厚生労働省発表のパートタイムの有効求人倍率は、2012年2月に1.01倍をつけ、売り手市場に反転した後、1倍以上の漸増傾向で推移。14年1月以降は1.3倍以上で高止まりし、直近の14年10月には1.39倍に達している。
求人需要も堅調だ。
全国求人情報協会の調べによれば、求人広告掲載件数等の前年比増減率は、前出の同期間において概ね2ケタ伸長を持続。求人サイトとフリーペーパーがけん引し、掲載件数の伸びは衰えを見せない。 
求人需要が強まる中で、パート・アルバイトの採用のタイト感は確実に高まっている。
実際、コンビニでも、求人ポスターの店頭掲出が常態化している店が少なくない。
採用傾向にもばらつきが見られ、とくにコンビニでは、就労許可を求める学校が増え、高校生の求人に影響が見られる他、就労環境の厳しさを敬遠し、深夜や早朝の採用難が高まっていると、川村氏は見る。
こうした状況を受け、人材確保について本部支援の動きも強まっている。
セブン-イレブンは14年3月、就業希望の問い合わせを一括して受けるコールセンターを開設。加盟店が決めた条件により、希望者を加盟店につなぐ役割を担う。
ローソンも同12月、子会社のローソンスタッフが人材紹介免許をもつコールセンターをスタート。セブン-イレブン同様、アルバイト希望者の受付を一括で行い、加盟店に応募者の情報を伝える一方、採用に至らなかった場合、応募者の同意を受け、募集サイトに掲載する近隣店舗を新たに紹介する対応を行うという。
また、ファミリーマートでは、同社ホームページ上で展開するストアスタッフ募集システム「ファミJOB」を11月にリニューアル。①地域や時間帯などから勤務を希望する店舗の条件の絞り込み、②面接の申し込み、③面接日時の予約、などを行える環境を整え、採用担当者の不在時の手続きを円滑化する対応を行っている。
パート・アルバイトの採用のタイト感が増す中、大手チェーンを中心に、チェーン本部が人材確保の加盟店支援に乗り出した格好である。

最低賃金の上昇が
コンビニ経営を直撃

採用環境の悪化に加え、加盟店オーナーの頭を悩ますのが、最低賃金の上昇だ。
最賃上昇の影響の大きさについて、さくら相談グループ・コンビニ経営研究所の三橋一公所長は、次のように語る。
「大都市を中心に上昇幅が大きい。千葉や埼玉など東京近接県などでは、東京寄りと反対側で日販水準が違うため、同じ最低時でも影響が異なる」
例えば、千葉県の26年度の最低賃金は798円。24年度の756円から42円の上昇となった。だが、千葉県でも、東京都に隣接する市川市や浦安市などと、南端の館山市や東端の銚子市とは、商圏の環境が明らかに異なる。
日販水準が低い地域でも、一律の時給負担となるため、加盟店経営に及ぼす影響は小さくない。
また、改定額を受けた時給設定について、実勢では最賃以上の負担になる点についても、三橋氏は指摘する。
「1円刻みの最賃基準だが、実際の時給設定はそれを上回る10円刻みで行われる。また、最低賃金ぎりぎりの水準で時給を設定する加盟店も少なくなく、既存スタッフの時給アップの負担も加わる」
確かに、1円刻みの時給設定は稀だ。前出の千葉県の場合ならば、2円増しの800円とするのが一般的だろう。 
また、最低賃金水準で雇用する既存のスタッフについても、最賃の上昇幅の時給アップが求められ、加盟店オーナーの判断に関わらず、実質的な時給アップが続く構造になっている。
こうした状況を示すのが、アイデム・人と仕事研究所の調べによる、平成26年度最低賃金の実勢時給への影響だ(求人広告に掲載された募集時の時給について、地域別最低賃金改定により、引き上げが必要となる賃金データの割合を算出)。
これによれば、最低賃金改定に伴う地域別の影響では、大阪府の35.5%増を筆頭に、神奈川県30.2%増、埼玉県19.8%増と、改定額が800円を超える地域で影響率が拡大。改定賃金で初めて800円を上回った埼玉県では、前年度の影響率を11ポイント上回る結果となっている。
改定率が大きかった職種については、「販売職」「サービス職(飲食調理)」「サービス職(接客・給仕)」となっており、最低賃金近辺での募集が多い小売業や飲食業において影響率の拡大が見られるという。

採用環境の悪化と最賃上昇が
時給競争に拍車かける

採用環境の悪化は、コンビニの時給アップに拍車を掛ける悪循環を生む可能性が高い。
居酒屋など飲食店とのスタッフの獲得競争が広がり、時給の切り上げが進むことに懸念を示すオーナーも少なくない。賄い食事の提供など、コンビニでは難しい特典により、コンビニが人材確保で劣勢に回るといった指摘もある。
採用のタイト感と最低賃金の上昇により、実勢時給の高止まり傾向をもたらしているのだ。
冒頭の川村氏の指摘の通り、今後においても、採用環境の好転は難しいと見るべきだ。既存スタッフの定着など、コンビニの人材確保も正念場を迎えている。(月刊コンビニ編集部)

採用術 勤務条件の緩和で応募の間口を広げる

 
採用環境のタイト感が増す中、アイデムの川村哲夫氏は、求人のターゲット枠の拡大を進めるべきとし、次のように指摘する。
「募集告知では年齢制限はないが、想定する年齢層に合致しない人については、面接時に断るのが一般的だ。だが、50歳以上の応募意欲は強く、高年齢の人材を含めることで、採用環境が緩和する余地がある」
コンビニの仕事の複雑さを指摘する声は強い。とくに、仕事の習得に困難さを感じる高齢者は尚更だ。だが、オフィスビルの開発に伴い、清掃業などを中心に、求人意欲が旺盛で、それに応える高齢者も少なくという。確かに、仕事内容の単純化などの制約はあるが、コンビニにとって、求人の間口を狭めることは得策ではない。
また、主婦層の雇用にもチャンスがあると川村氏は指摘する。
雇用側にとって、勤務時間が比較的柔軟な大学生やフリーターの確保が難しい中、主婦層の雇用は次の選択肢だ。一部のサービス業の企業では、小さい子供を抱えた主婦に対し、勤務時間を短縮化と時給の上乗せという待遇改善により、雇用を積極化する動きも見られるという。  
「主婦層を有効な働き手と考えるならば、勤務条件を緩和することで、採用の道が開けてくる」(川村氏)。
 同じことは、採用一般についても言える。
コンビニを仕事先に選ぶ背景には、近くで自由度も高いといった見方がある。これまでコンビニの求人は、欠員補充に対応した、コンビニのシフト優先の採用が多かったが、「週2日、1日3時間以上」など、勤務条件を緩和する動きが増えていると川村氏は見る。(編集部)

負担増 加盟店経営を圧迫する時給の上昇

 
最低賃金の上昇は、コンビニの加盟店経営にとって、二つの意味で大きな負担となる。一つは、実勢賃金との乖離や地域的な実質負担の違いによる影響だ。
 コンビニで働くスタッフの時給は、1円刻みで設定されることはまずない。最低でも10円刻みというのが一般的だろう。従って、最低賃金の設定は1円刻みだが、実際の時給になると、それを上回る10円単位の設定のなるはずだ。最賃水準で雇用する既存スタッフがいた場合、その時給引き上げの負担も当然、発生することになる。
 また、地域的に実質的な負担が異なる点もある。一つの都道府県において、都市部と地方部があるならば、都市部が比較的日販水準が高いために、最低賃金の上昇を吸収できるかもしれないが、地方部においては上昇分をカバーするだけの日販の確保が難しいといったことが十分に想定される。
とくに、東京近接の県では、こうした傾向が見られるだろう。
もう一つの負担は、夜勤シフトに伴うものだ。
採用環境の悪化に伴い、深夜スタッフの確保が難しい状況はあるが、一方で深夜手当などの負担が大きいため、オーナー自身が深夜シフトに入るといった本末転倒な状況も少なくない。
実際、深夜手当の割増が発生し、早朝シフトのスタッフが確保できないために、勤務時間を延長するといったこともある。その結果、8時間超の勤務となり、別途、残業手当が生じる場合もある。
時給の上昇は、この深夜勤務に関わる人件費の負担増を招くことになる。
今後においても時給は上昇傾向が続くと見られる。人件費の負担増に伴う加盟店経営への影響は決して小さくなく、オーナーの深夜勤務の常態化などを通じて、チェーンの競争力を損ねるリスクもあると考えるべきだろう。(さくら相談グループ・コンビニ経営研究所所長 三橋一公)