喫煙者を不採用としてもよいか

はじめに
厚生労働省統計調査によると、平成24年の喫煙率は男性34.1%・女性9.9%。平成元年の55.3%・9.4%と比べ減少傾向が見られます。このような流れの中、星のリゾートグループでは「喫煙者を採用しないこと」を表明し話題になりました。会社は個人の嗜好である喫煙行動をどこまで制限できるのでしょうか。喫煙者を減らすことが会社にどのようなメリット・デメリットを与えるのでしょうか。
【採用時】
喫煙者採用拒否は原則違法ではない
喫煙の有無による採用拒否をすることは原則として違法とはならないといわれています。企業には広く「経済活動の自由(憲法22条および29条)」が認められており、一度採用すると解雇が難しい日本の雇用環境において、採用の自由は企業の人事権のなかでも特別に自由度が高い傾向にあります。
【就業中の労働者に対する禁煙命令】
已採用し勤めている労働者については、労働時間中であるか否かによって禁煙命令の正当性が異なります。まず、労働時間中については、労働者は「仕事に専念する義務」を負っていますので、喫煙により業務を中断する「私的行動」を禁止しても問題ないでしょう。
 一方で休憩時間中の喫煙については、労基法で「休憩時間は自由にさせなければならない」と定めてあるため、禁煙命令は原則としてこの自由利用に反します。ただし、企業には「労働者の安全に配慮する義務」も課せられており、最近の世の中の流れから受動喫煙の対策(つまりタバコを吸わない人の健康に配慮すること)もこの安全配慮義務の一つとみられることがあります。愛煙家にとってますます肩身が狭くなりますが、実際に受動喫煙防止策を講じなかったことで損害賠償を請求されたケースもあります。

「非喫煙企業」にすることのメリット・デメリット
前述の星のリゾートグループでは、喫煙者を採用しない理由を「競争力向上のため」を言明し、非喫煙者によるメリットとして以下の3つを上げています。

 1.作業効率向上
    血液中のニコチン含有量減少による集中力低下は中毒症状であり、
   喫煙者はスタッフの能力を低下させる
 2.施設効率向上
    リゾート事業において、スタッフのための分煙スペースを作る
   くらいなら顧客へのサービスにあてるべき
 3.非喫煙者との公平性保持
    喫煙者のみ頻繁な休憩が認められるのは不公平

 また、企業イメージ保持の面でもメリットがあります。健康増進を売りにしている企業の社員がヘビースモーカーでは、営業上の説得力に欠けるでしょう。マッサージや美容業務など顧客と直に触れるサービス形態においては、タバコの匂いが顧客を不快にさせる可能性があります。
喫煙を認めるメリット
一方で、喫煙スペースがスタッフの憩いの場として機能しており、喫煙がスタッフ間のコミュニケーション円滑化に役立っている場合もあります。喫煙スペースでは上下関係の緊張感が緩み、普段話すことがない上司や部下と、気楽に情報交換できることで新たなアイデアが浮かぶこともあるでしょう。
 自社のスタッフの喫煙状況を振り返って喫煙文化に対して企業のスタンスを検討してみてはいかがでしょうか。

改正道路交通法と社内の自動車等利用上の注意
概要
近年、交通事故総件数は減少傾向を続けていますが、一方で「無免許運転」や「病気による発作」を原因とした重大事故が起こっており、社会的に問題視されています。
 これを受け平成25年6月に改正道路交通法が公布され、一部施行・運用が始まりました。通勤や営業などで自動車・バイク・自転車を従業員に使用させている会社も無関係ではありません。
 改正道路交通法の改正ポイントのうち、労務管理上の注意点について解説します。

道路交通法改正のポイント
1.無免許運転等の悪質・危険運転者への厳罰化(2013年12月施行)
無免許運転をした者・無免許者に車両を提供した者・同乗者などに対する罰則が、現行の「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」から「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に引き上げられました。
2.ノーブレーキ自転車への取り締まり強化(2013年12月施行)
「ピスト」「フィクシー」などと呼ばれる「ブレーキがついていない自転車」について、警察官が運転を停止・中止させることが可能になりました。運転者が警察の命令に従わない場合は5万円以下の罰金が科せられます。
3.一定の病気がある運転者に対する対策(2014年6月までに施行予定)
総合失調症・てんかん・再発性の失神・アルコールや薬物中毒などの病気にかかっている場合は、都道府県公安委員会が運転免許取得・更新を拒否できることになります。

労務管理上の注意点
自家用車での通勤を許可している場合・社用車を従業員に運転させる場合・または従業員のマイカーを営業用に使用させている場合には、会社に「運行提供者としての責任」があることを会社は認識しなければなりません。
 会社が業務上、自動車などの車両を使わせる場合には、会社に直接の過失がなくても賠償責任が発生する可能性があるため「通勤を含め、業務に関連して車両を使用させてもよい労働者であるか」をしっかりとチェックできる仕組みを備えておく必要があります。
 具体的には以下のチェックポイントと対策を検討しましょう。

チェックポイント 対策
有効期限内の運転免許証を持っているか 運転免許証の写しを通勤申請時に提出させ、有効期限も管理する
自賠責保険だけでなく、対人対物事故補償のある損害賠償任意保険に加入しているか 保険証のコピーを提出させる。保険証書のないものには通勤や車両使用を許可しない
運転に支障を来す持病や病歴がないか 病歴申立書や質問票を提出させて、運転に支障ない状態であることを確認する
飲酒運転などの危険行動に対する認識が甘くないか 安全運転に関する社内教育
車両整備についての認識はあるか、違法な改造をした車両を使っていないか 車両整備に関する知識教育

交通事故はいったん起きてしまうと重大な損害を発生させます。会社が負う安全配慮義務の観点からも、適法で安全な運転を社内全体に浸透させましょう。