コンビニウォーズ!「第3の稼ぎ頭」コーヒー市場参入のワケ
大手全社が販売する淹れたてコーヒー。今年1月、セブン−イレブンが最後に参入し、カフェチェーンを凌ぐ勢いで伸びているという。なぜ注力するのか。「売り上げ以外の目的」を明らかにする。コーヒーを飲むならコンビニで。コーヒーをテークアウトするのもコンビニで。こんな時代がそこまできている。
弁当・PB商品の強化、酒類やタバコの取り扱い、デザートの拡充など、他業種の機能を付加しては磨き上げ、成長してきたコンビニ各社がいま一斉に強化しているのが、淹れたてのコーヒーだ。販売スタイルや価格、メニュー構成は各社異なるものの、売り上げはどこも絶好調といっていい。
活気づくコンビニコーヒーの最前線から透けて見えるのは、この商材の持つポテンシャルの高さだ。喫茶店やファストフード店からただ顧客を奪うだけではない。単に売り上げにオンするだけでもない。コンビニコーヒーは、さまざまな波及効果をもたらしている。
■原価率は平均の半分以下
コンビニが淹れたてコーヒーに挑戦するのは今回が初めてではない。各社とも、過去10年近く何度もトライしては縮小、もしくは撤退を繰り返してきた。諦めずコーヒーに挑んできた第1の理由は、その利益率の高さにある。

UBS証券でアナリストを務める守屋のぞみ氏はこう断言する。
「コンビニが扱う商品の平均原価率は70%ですが、淹れたてコーヒーはそれよりも原価が低く、粗利率が高い。100円台の販売価格で十分な利益が見込める商材です。コンビニチェーンがやはり力を入れている生鮮食品は、有望なカテゴリーではあるものの、ロス率が高いという難点がありますから、利益率が高い淹れたてのコーヒーと合わせて、採算のバランスをとっていると見ています」
某大手セルフ式コーヒーチェーンの数字を参考に、コンビニコーヒーの原価を探ってみよう。コーヒー豆を自家焙煎し、国内に約1000店舗を展開しているこのチェーンの原価率は18%とされる。コンビニは、豆を商社から仕入れ、焙煎をAGFやUCCといった専門企業に委託しているため原価率はこれより高くなるが、店舗数は桁違いに多い。仕入れ規模を考えると20%台前半の数字、いや、20%を切る数字も不可能ではないだろう。

セルフ方式を採用している「セブンカフェ」のコーヒーの値段は100円。仮に原価率を20%と想定しても、1杯売れば80円の粗利が転がり込む。1日80杯のペースで販売すると、1店あたりの粗利は年間で約230万円。全店(約1万5500店)への導入が実現すれば、淹れたてコーヒー単体での粗利合計は約360億円に及ぶ。
「セブンカフェ」導入にあたり、セブン−イレブンは富士電機と共同で1杯ずつ豆をひいてドリップするマシンを開発しているが、このマシンのコストは従来型エスプレッソマシンの約4分の1程度。イニシャルコストを徹底的に抑えた。ロス率も食品としては例外的に低い。1杯ずつコーヒーを淹れるため、オーダーミスさえなければ廃棄はゼロだ。缶コーヒーやチルドコーヒーへの影響も思いのほか出ていない。「淹れたてコーヒーのぶんだけ売り上げがプラスになった」というセブン−イレブンに対して、他チェーンは「影響はある」と認めるものの、その程度は「多少」。プラス効果のほうが断然大きい。コーヒーは、コンビニの次の成長モデルをつくるキラーコンテンツでもある。コンビニの売り上げを過去5年で20%以上も押し上げたタバコの勢いは一段落した。総売上高の25〜30%を占める主要商材となったタバコも、今後は喫煙人口と比例して売り上げ減が予想される。かといって弁当・惣菜のこれ以上の大きな伸びは期待しづらい。新たな「金脈」がほしいコンビニにとって、淹れたてコーヒーは導入すれば必ず売れる、しかも粗利が稼げる有望商品だ。

コンビニの多機能化 おにぎりから住民票まで
▽…コンビニエンスストアは弁当やおにぎり、ファストフードなどすぐ食べられる食品の販売が強み。一方で1970年代前半にコンビニが誕生以来、社会の変化に合わせて新たなサービスを追加、様々な機能を取り込んできた。
▽…代表が水道や電気料金、税金など公共料金などの収納代行サービスだ。男女雇用機会均等法が施行された翌年の87年、女性の社会進出で夜などに手軽に支払うニーズが高まるとみて、セブン―イレブン・ジャパンが東京電力の電気料金を対象にしたのが始まり。現在は国民年金保険料やインターネット通販の支払いなども扱い、同社の2012年度の取扱金額は約3兆7300億円と全店売上高(約3兆5000億円)を上回る。
▽…00年以降は24時間365日営業と、全体で5万店を超える身近な営業拠点としての役割を拡大。店内ATMの設置で深夜でも現金が引き出せるようになったほか、マルチコピー機や店頭情報端末を利用して住民票の写しや印鑑登録証明書の取得、スポーツやコンサートのチケットなどの購入も可能となった。住民票の写しや印鑑証明など各種公的証明書の発行枚数は12年度に23万6千枚と前年度実績の2倍を超え、ここにきて参入が相次いでいる。
▽…これらのサービスから得られる手数料収入の利幅は薄い。だが来店動機が増えることで食品などのついで買いが見込めるため、各社が注力している。

「見切り販売制限」でセブン−イレブンに賠償命令 同種訴訟で裁判所の判断分かれる
コンビニエンスストア利用者には興味深い判決が2013年8月30日に東京高裁で出た。コンビニ最大手の「セブン−イレブン・ジャパン」に対し、北海道や大阪府、兵庫県の加盟店主4人が、販売期限の迫った弁当などを値引きする「見切り販売」を制限されて損害が生じたとして計約1億4000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、東京高裁の斎藤隆裁判長が「値引き販売を妨害した」として計1140万円の支払いを命じたのだ。

セブンは「上告する」

斎藤裁判長は、店舗指導する同社社員が原告らに「見切り販売をしたら店を続けられない」などと発言したと認定し、「事実上の強制があり、商品価格を決める権利を妨げた」との判断を示した。同社は「判決内容の一部が認められず遺憾。承服しかねるので上告する」とのコメントを出した。

見切り販売は消費期限の迫った食品を値引きして販売すること。閉店間際のスーパーやデパ地下で「3割引」「5割引」といった割引シールが貼られた弁当や総菜などが売られている光景は珍しくない。通常、売れ残ると廃棄することになるため、発生する損失を最小限に抑えるようと値下げして販売するのだ。

同社の見切り販売を巡っては、公正取引委員会が2009年に見切り販売の制限で排除措置命令を出した経緯がある。命令後は見切り販売できるようになり、食品廃棄に対し社会の批判的風潮が強まるなか、同社は加盟店の廃棄損失の15%を負担するようにもなった。

コンビニ業界は過去最高の出店競争

ただ、実際にセブンの全国約1万5500店舗で見切り販売を実施しているのは1%程度だといわれている。確かにスーパーなどに比べ、セブンで見切り値引きされた商品を目にする機会は滅多にない。その理由について、あるコンビニ大手幹部は「見切り販売の時間帯を狙った顧客が増加し、定価での販売に影響が出るうえ、ブランドイメージが低下するとの懸念があるからだろう」と指摘する。だからこそ、業界の一部には「セブンさんが廃棄損失を15%負担することで、加盟店が見切り販売に踏み切れないようにしているのでないか」との見方もある。

しかし、公取委の命令が出て以降、全国で「見切り販売しないよう指示された」などと同種訴訟が起こされ、裁判所の判断は分かれている。コンビニ業界では過去最高水準の新規出店競争となっており、過当競争が繰り広げられている。近隣にライバル店がオープンして売上低下に陥る店舗も出てきているだけに、同社の価格戦略に不満を持つ加盟店が同種訴訟を提起する可能性もあり、今後の動向が注目される